氷の女王に誓約を

ただ何度も同じプロをやっていたらジャッジの印象も悪くなるし、なにより飽きられてしまうから、大抵はシーズン毎にプログラムを変える。


「あれはなかなか高評価だったからな。PCS(演技構成点)も出ていたし、ジャッジ受けも良かった。最悪シェヘラがこけたら、死の舞踏に戻すのもありだろう」


「あら? 残念だけど、私がもっと素晴らしいプロに仕上げるから、そんな心配は必要ないわよ」


ふふんっと小悪魔な笑みを浮かべる有香さんに、コーチは押し黙ってしまった。


あの人も女性には勝てないようだ。いや、有香さんには誰にも勝てないか。


「じゃあショートはシェヘラで決定ということで。後フリーだけど、そっちの候補曲は?」


「あ、はい。そっちも考えてます」


大塚さんに促されて、再びipodを操作する。


イヤホンから流れだしたのは、バンドネオンの力強い音色。


恐らく初めて聞いたのだろう、コーチを頭上にクエスチョンマークを浮かべている。


「タンゴ? だけど初めて聞くな」
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