氷の女王に誓約を
オーケストラのような壮大で、だけど堅苦し感じではなく、良い意味で田舎臭く味のあるメロディライン。
タンゴというと情熱的な印象があるけど、これは情熱の中にもそよ風のような爽やかさ出ていて、それこそアクが強くない。
スケートとの相性も良いと思うし、今までオーケストラばかり滑っていたから、こういうタンゴ曲で滑ってみたいという個人的な願望もある。
「どうですかね。少し編曲するだけで十分プログラムになると思うんですけど」
「そうだな……」
なにやらまた渋い顔。なにか言いたそうな表情だが、一瞬だけ目を伏せると口を開いた。
「いいんじゃないか。自分が滑りたい曲で滑った方が良いに決まっているし」
少し棒読みなのが気になった。
それにまるで自分自身に言い聞かせているようで、なにか引っ掛かる。
やっぱりクラシックの方が良いのかな。今までもクラシックを進めてきたし。
一人モヤモヤしている間にエキシビション用の曲も決まり、パソコンを使った編集作業になってしまったので、本田コーチの真意を聞くことが出来なかった。