氷の女王に誓約を
ただでさえ二年間もの間、あの無表情鬼コーチの元で指導を受けてきたから、よりギャップがあってそう感じてしまう。
大塚さんはある意味俺の癒しだ。頼もしい限りである。
「だけどさすが先輩だなぁ。筋トレのメニューも考えつくされてるよ」
本田コーチお手製マル秘練習ノートに目を通しながら、大塚さんが口にした。
「そうなんですか?」
「嗚呼、タッくんの柔軟性を壊さないように、必要な所に最低限の筋肉しか付けさせないようにしてあるよ」
嘘、そこまで考えてたんだあの人。
筋トレは単純に体力強化とジャンプの成功率をあげるためにやっているもんだと思ってたけど、俺の柔軟性のことまで考慮して練習メニューを組み立ててたんだ。
でも言われてみれば、昔より筋力はついたけど、柔軟性は全然落ちていない。
寧ろ軸がしっかりして、難しいポジションでも安定して回れるようになったから、逆に向上しているくらいだ。
やっぱ凄いなコーチは。協調性は問題ありだけど、指導者としては一流だ。