氷の女王に誓約を

「だけどホント羨ましいよ。俺もタッくんぐらいの柔軟性があれば、スピンのバリエーションがもっと増えたのに」


そう言って俺の肩を揉む大塚さん。


ちょっと痛いしくすぐったいしで、俺はやんわりと腕を払った。


「なんか生まれつき筋肉が柔らかいんですって。普段はプニプニしてるけど、力を込めると引き締まって、アスリートにとって最高の筋肉らしいですよ」


説明しながら袖を捲って二の腕を出すと摘んで見せた。


うん。アスリートとは思えぬプニプニ感。


大塚さんも面白そうに二の腕を摘んでいる。大塚さん、楽しみ過ぎです。


二の腕鑑賞会も終わり、大塚さんは再び練習ノートに目を通す。


水分を摂りながら、俺は辺りを伺った。


良し、今日は奇跡的に誰もいない。


いつもは誰かしらいるリンクだが(主に美優が)今日は俺の貸切状態だ。


今しかない。大塚さんに相談しよう。フリーのプログラムのこと。
< 51 / 400 >

この作品をシェア

pagetop