氷の女王に誓約を

「あの、ちょっといいですか?」


「ん、別にいいけど」


俺の思っていることを一通り打ち明けると、大塚さんは目を細めながら微笑を浮かべた。


「確かに先輩は“クラシック至上主義”な所があったからなぁ。現役時代はずーっとクラシック一本で滑ってたし。後ジャッジの傾向もあるだろうね。ほら、ジャッジってほとんどフィギュア経験者じゃん? 昔の人はほとんど金持ちの坊ちゃんかお譲様だったから、先輩みたいに“クラシック至上主義者”が多いんじゃないかな」


「やっぱり……」


コーチはそんな裏の所まで考えてるんだ。


無難で王道なクラシックなら玄人受けもいいだろう。


テレビの番組の挿入歌という知名度が低い楽曲より、世界中に知られているクラシックの方がジャッジも採点しやすいだろうし。


そこまで言われてしまうと、今の曲が本当に良いのかどうか迷ってくる。


「やっぱり変えた方が……」


「いや! 変えない方が絶対いい!」
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