氷の女王に誓約を
朝飛、来日
航空のロビーでケータイ片手に人を待つ。
ゴールデンウィークということもあり、空港内は家族連れの旅行客の姿が多く見られる。
皆大きな荷物を抱えている中、ほとんど手ぶら状態の俺は少し異色を放っていることだろう。
俺がここに来た目的はとある人物のお迎え。
ロンドン便が先ほど到着したから、そろそろ来るはずなんだけど……。
キョロキョロと辺りを見渡していると、俺と同じように周囲を気にしている人物を発見した。
人ごみに紛れて顔はよく見えないが、あの毛先が所々跳ねた茶色がかった髪は間違いない。あいつだ。
人混みが少なくなった隙を見て、片手を上げて手を左右に振る。
俺の姿に気付いたのか、ニコッと八重歯を見せて大きなキャリーバックを引きずりながら駆け出した。
「お帰り、朝飛(あさひ)」
「ただいま! タク兄!」