氷の女王に誓約を

転倒もしくは両手をついたらアウト。


着氷が大幅に乱れたり、明らかな回転不足でなければ、多少の減点要素はセーフとする。


普通に考えれば女子の美優が圧倒的に不利な対決だが、生憎彼女は現在女子選手で唯一六種類全ての三回転ジャンプをマスターしている天才少女。


時と場合によっては、俺達男子組が負ける可能性もなくはない。


小さい頃練習がてら美優とやった遊びだけど、この面子でやるとなるとなかなか凄いことになりそうだ。


「野田さん、悪いですけどジャッジをお願いしま……隣のカメラマンは誰ですか?」


「嗚呼、大丈夫よ。夕方のニュースには間に合わせるから」


いや、俺が聞いているのはそういうことじゃないんですけど。


こうなるから嫌だったんだ。ジャンプ対決するの。


「ミューちゃんは紅一点なんだから、野郎共は手加減してあげなさいね」


にこっと微笑み野田さん。


まともなことを言ってるように思えるけど、俺には裏の声がしっかりと聞こえた。
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