氷の女王に誓約を
兄としては弟が帰って来たのだ。嬉しいに決まっている。
国籍を移すにしても後々問題が出てくる可能性もあったわけだから、家族としてもこの選択が正しいとは思っている。
それでも、本当にこれで良かったのかと今でも疑問に思う。
「今のイギリスってフィギュア発展途上国じゃん。正直ライバルと呼べる選手はいないし、生温い環境にいるより、タク兄や美優姉と一緒に練習して、色々と揉まれた方が結果的に俺のためになるんじゃないかなって思ってさ!」
美優の問いにそうキッパリと答えた朝飛。
これが二つ目の理由。
だけど本当の理由は―――
「話してたら滑りたくなっちゃった。タク兄、靴貸して」
「え? お前持って来てないのか?」
「うん。丁度履き潰しちゃった所でさ。だったら日本で作ればいいやーって思って」
「仕方ないなぁ」