氷の女王に誓約を

ジャンプのタイミングが定まらないが、大塚さんが言うには幅が出ている。


それでもやっぱり、今からブレードを変えるというのは前例がない大冒険だ。


まして今年は五輪シーズン。初戦のGPSまで半年を切っている。


プログラムも完成してない状態で一から全てを見直すのはあまりにも危険だ。


試合までに調整が間に合わない。というのならまだマシだ。


最悪ジャンプが戻らず、国際舞台から姿を消す可能性だってなくはない。


いくらなんでもリスクが大きすぎる。正気の沙汰じゃない。


「今から死ぬ気でやれば初戦のNHK杯までには間に合うはずだ。今月中にスケーティングを物にして、残りの三ヶ月でジャンプ矯正。残り一ヶ月でプログラムを詰めれば大丈夫だ」


大丈夫じゃないですコーチ。全然問題だらけです。


「ギャンブルはお前の専売特許だもんなぁ、タク?」


最後にトドメの一撃を刺され、俺は黙って頷いた。


本田コーチの言うことは絶対だ。基本的には逆らえない。
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