氷の女王に誓約を
昔取った杵柄(きねづか)という言葉の通り、身体に沁みついたスケーティングは歳を取っても衰えることはない。
寧ろ大塚さんの滑りはより鮮麗されていて、現役選手顔負けだ。
間近で見るだけでも凄く勉強になる。
エッジ捌き、重心移動、スケーティングの姿勢。どれを取っても天下一品。
もしコンパルソリーが復活したら、大塚さん無双になることだろう。
「だいぶ良くなったね。靴にも慣れたようだし、完璧だよ」
そう言って俺と大塚さんが氷上に刻んだトレース跡を見比べる。
綺麗な円が二つ。
自分でも言うのもなんだが、コンパルはかなり得意だ。
若干俺のが歪んでいるかも知れないけど、それでも大塚さんに引けを取らないと自負している。
「でもちょっと歪んでますね。パーフェクトサークルにはまだまだ程遠いです」
「そんなことない。これだけ出来れば十分だよ」