氷の女王に誓約を

ポンッと俺の肩を軽く叩くと、大塚さんは俺の円を眺めながら聞こえるか聞こえないかの声量で小さく呟いた。


(あのスピードでこの完成度。俺でも無理だぞ)


大塚さんが何を言ったのか気になったけど、すぐに何もなかったかのように次の指示を出したので練習を再開した。


そうだ、俺に立ち止まってる時間はない。


もっともっと練習してこの靴に慣れないと。時間は全然ないのだから。


一旦水分休憩を取るためにリンクサイドに近づくと、トイレに行っていた朝飛が俺のペットボトルを手渡した。


今日は実に数年ぶりの兄弟合同練習。


朝飛は俺があげた靴との相性も良いみたいで、難易度の高いジャンプを次々と決めている。


身長が伸びる成長期ではジャンプの軸が変わるせいで、ジャンプの精度が落ちるのがこの世界の常識なのだが、この完成度。


我が弟ながら本当に末恐ろしい。


朝飛は今シーズン、ジュニアとシニアの掛け持ちを計画している。
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