氷の女王に誓約を

朝飛が俺や母さんにお願いする時に発する弟声だ。


末っ子にしか発することが出来ない最強の声色だろう。


この声を聞くとついつい甘やかしてしまったが、朝飛ももう中学生。俺も立派な大学生だ。


弟声なんかに負けるものか。知らんぷり。


「ねぇ、タク兄ぃ」


「ダメ」


「俺も手伝うからさぁ」


「……俺も忙しいの」


やばい。今ちょっと負けそうだった。


三年もロンドンにいたせいか、朝飛の日本語は小学校六年生の段階で止まっている。


口調も言葉づかいも小学生。しかも声変りをしても高音だから、弟声を出されると完全に幼い子供に聞こえてしまうし見えてしまう。


恐るべし弟声。
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