幸せタクシー
父親を亡くして1年が経った。
俺は、悲しみを心に閉じ込めて
日々過ぎる毎日にイライラしていた。
高校3年の6月。
大学受験は諦め、父親の代わりに家族を支えるため、
進路調査書に"就職"と書き直し担任に提出した。
担任:「詫間!…就職するのか?」
職員室で担任のデスクの横に立つ俺を見て、そう驚く担任。
俺は、そんな驚く担任の目から視線を外して返事をした。
「…もう、母親に迷惑は掛けれません。」
担任は俺の表情を伺うように、覗き込む。
そして、考え込むように顎に手を当てて、ため息を漏らす。
担任:「…大学には奨学金がある、正直なところ、お前の成績で進学しないのは…もったいない。」
俺は、担任と目を合わせないままてきとうに返事をする。
…どんなに行きたい大学があったとしても
"就職"しなけらばならないのだ。
必死で説得する担任の気持ちが、俺の心を掻き乱し、イライラさせる。
親父が死ななければ、こんなことにはならなかった。
「俺は、就職します。」
担任の言葉を遮り、職員室を出た。