幸せタクシー
今日は朝から雨が降っていて
帰り際にはザアザアと音を立て酷く大降りになっていた。
…雨なんてどうでもいい。
学校に迎えに来た母親の車に乗ると母さんが「ごめんね。」と俺に言う。
そんな母さんの言葉を無視して、助手席の窓から、降り止まない雨を見ていた。
そもそも俺は大学に行くつもりだったんだ。
なのに美貴が、"進学する"なんて言わなければ、俺は行けたんだ。
詫間 美貴(タクマ ミキ)は、今は高1で我が儘な俺の妹だ。
中学校から赤点ばかり取っていたくせに、
何で
努力もしないやつのために…
努力してきた俺が諦めなきゃいけないんだ。
"お父さんもいないし…2人も4年生大学は、奨学金を借りたとしてもきついわ…。"
昨日、母さんに言われた一言を思い出す。
母さん:「…修一は、お兄ちゃんなんだから…我慢してね。…美貴が大学卒業して、修一も就職してお金貯めたら、行きたかった大学、行ったらいいじゃない?」
妹を優先させる母さんの慰めか分からない言葉にまたイライラする。
はあっとため息をついて、目をつぶって車のシートにもたれ、眉間にシワを寄せた。