幸せタクシー








部屋に戻りベッドに寝転がって考えていると、苛立った気分が少しずつ落ち着いてくる。




ザアザアと降りしきる雨の音がだんだん音を増して俺の耳に響く。


美貴が出て行ってから20分は経っていた。





少し、言い過ぎたかな。



けど俺の気持ちだって分かってほしい。


ムカつくんだ。


いつも親父も母さんも美貴ばかり庇う。


"お兄ちゃんなんだから"その言葉に何回我慢させられたか。


俺ばかりが我慢してるんだ。



目をつぶってフウッと息を吐く。


激しい雨音が、心に何かを抱かせる。


何だろう、この気持ちは。



胸がザワザワと、何かが押し寄せるような良く分からない気持ちになった。



いったい、何だっていうんだ。











ふと、昔を思い出す。考えようとも思ってないのに、一度考え出すと、つい考えてしまう。



美貴とはいつも喧嘩ばかりだ。


けれど、いつのまにか仲直りして笑い合っていた。





我が儘で大嫌いな妹。
けれど、大切な存在。



共働きの両親の家に帰って来ない日々を、美貴と二人で過ごして来た。





< 19 / 30 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop