幸せタクシー
部屋に戻りベッドに寝転がって考えていると、苛立った気分が少しずつ落ち着いてくる。
ザアザアと降りしきる雨の音がだんだん音を増して俺の耳に響く。
美貴が出て行ってから20分は経っていた。
少し、言い過ぎたかな。
けど俺の気持ちだって分かってほしい。
ムカつくんだ。
いつも親父も母さんも美貴ばかり庇う。
"お兄ちゃんなんだから"その言葉に何回我慢させられたか。
俺ばかりが我慢してるんだ。
目をつぶってフウッと息を吐く。
激しい雨音が、心に何かを抱かせる。
何だろう、この気持ちは。
胸がザワザワと、何かが押し寄せるような良く分からない気持ちになった。
いったい、何だっていうんだ。
ふと、昔を思い出す。考えようとも思ってないのに、一度考え出すと、つい考えてしまう。
美貴とはいつも喧嘩ばかりだ。
けれど、いつのまにか仲直りして笑い合っていた。
我が儘で大嫌いな妹。
けれど、大切な存在。
共働きの両親の家に帰って来ない日々を、美貴と二人で過ごして来た。