幸せタクシー
それが兄妹というものだと思う。
喧嘩は日常茶飯事だけど。
交通事故で親父が病院に運ばれた時、後から駆け付けた俺の前に、泣き崩れた美貴の後ろ姿と
深い眠りについた親父の姿。
母さんも俺の後に駆け付けて美貴をギュッと抱きしめた。
"さっきまで、…さっきまで、生きてたの"
そう言って泣きじゃくる美貴の言葉に涙が止まらなかった。
親父が死ぬ瞬間を、美貴は見届けたんだ…。
どうして、こんなことをまた思い出してしまうんだろう…。
ガバッと体を起こしてリビングへ向かう。
時計は18時を指していた。窓の外を見ると、薄暗く降り止まない雨が窓に打ち当たる。
風もさらに強くなってきているみたいだ。
母さん:「…修一、…やっぱり美貴が心配だわ。」
机にサラダの乗った皿を置きながら、母さんはリビングに入って来た俺を見て言う。
「…。大丈夫だろ。…。」
ザワザワと心の奥から押し寄せる何かを隠すように、俺は自分自身にもそれを言い聞かせた。
母さん:「何だか、胸騒ぎがするわ。」