幸せタクシー
出会い
岸村聡美 Side
暗闇に包まれる瞬間
誰かが私の名を呼んだ。
誰だったんだろう?
低い、男の人の声が―…
お母さん:「…さ―み…とみ―聡美っ!」
そう必死なお母さんの声が聞こえてきて、目を覚ます。
目の前に映る白い天井。
あれ、私―…
お母さん:「はぁ!良かった…―。もう、心配させて!!」
お母さんは私の顔を覗き込むと安堵の息を漏らしてそう言った。
体を起こして周囲を見渡すとお母さんの隣に白衣の男性。
白いベッドに、…―ここは、
「―…ここどこ?」
お母さん:「病院よ。聡美、覚えてないの?」
…病院…。
じゃあその隣の男性はお医者さん。
さっきの男の人の声は、…このお医者さん…?
ボーッと考え事をしていると、白衣の男性が私の目線へと腰を下ろす。
医者:「…頭を打っているので、記憶が薄れているのでしょう。大丈夫とは思いますが念のために検査しましょう。」
お母さん:「すいません、お願いします。…あの、聡美は入院とかに、なりませんよね?」