幸せタクシー
そして、またゆっくりと口を開く紗英。
紗英:「‥でね!その幸せタクシーに出会った人がいるんだ。」
「えー!うそ!」
「やっぱ在るんだって!」
「その人誰?」
「本当に幸せになるの?」
一斉に聞きまくる皆の中で、紗英はまた得意げな表情をする。
紗英:「そうね!その人は、私の友達の知り合いのお父さんの知り合いの友達なんだけど…。」
一気に、複雑に交差する関係に皆「ウンウン…。」と考え出す。
紗英:「でね!その人は、仕事に悩むサラリーマンで、たまたま帰りにタクシーに乗ったの。そして運転手に、相談をしたら…、」
ゴクリと、唾を飲む。
誰もが紗英の次の言葉を待っていた時
キーンコーンカーンコーン…
と5限のチャイムが鳴り響く。
予鈴にも気付かなかった。
紗英:「あ!もう5限だ!また放課後ね!」
そう言って紗英は嬉しそうにロッカーの方へ教科書を取りに行った。
「えー!マヂ〜!?」
「続きー!」
「いいところだったのに!」
「えー紗英ー!?また後で聞かせてねー?」
そんな文句を言う皆に微笑みながら紗英は頷いた。