意地悪王子のお気に入り
「目ざわり、消えてくんない?」
あたしは一瞬にして鳥肌が立った。
間近で見ているわけじゃない。
なのに、怖い。
「ひ、ひどい…」
彼女は目に涙を浮かべて、そのままその場から立ち去り屋上から姿を消した。
最後に、ドアの勢い良く閉める音が屋上に響いた。
何、今の…
紅い目で睨みつけて…
とにかく、すごくこわかった。
「盗み聞き?サツキちゃん。」
あたしは、少し低い声であたしの名前を呼ぶソラの声にビクリッと体を反応させた。
べ、別に、盗み聞きしていたわけじゃない…
それより、今、ソラが怖くて見てられない。
「サツキちゃん、出ておいでー!!」
いつもの調子であたしのことを呼ぶソラ。
足が動かない、怖くて動けない。