偽りの結婚(番外編)
ラルフの苦悩【完結】
まだ夜が明けきらぬ頃―――
部屋をオレンジ色で包む淡い光に誘われる様に目を覚ます男が一人。
カーテンは閉め切っていたため外の様子は分からないが、まだ太陽が昇っていないことは確か。
ベッドサイドの照明を付けたまま眠ってしまうなど、不覚だった・・・
心の中で、溜息交じりに呟いた男、ラルフは背後にある照明を消すために手を伸ばす。
・・・が、それは自分の胸に添えられた手によって阻止される。
実際は、抱きしめられているわけでもないので離れようものなら離れられる。
しかしその状況に、ラルフは身じろぎ一つ出来ない。
否、したくなかったのだ。
ふと見下ろし、腕の中で眠りにつく愛しい存在に、ほっと安堵する。
良かった・・・起きていない・・・
腕の中で規則正しい呼吸を繰り返すのは、最愛の妻。
サラサラのプラチナブロンドの長い髪をベッドに散らばせ、今はぐっすりと眠りについている。
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