偽りの結婚(番外編)
すまないな、シェイリーン。
こうなったラルフは、俺にも止められない。
…というか、そろそろ自覚してくれ。
ラルフの懐の狭さに……
シェイリーンとしては舞踏会のお礼が言いたくて、ウォール侯爵の子息に会いたいんだろうが。
それを、色恋沙汰と誤解されるなんて思わないもんな。
こんな小さな事で嫉妬していたら、この先どうなる事やら。
まぁ、このどうしようもない男に惚れられたのが運のつきだな。
ご愁傷様……
執務室の扉を閉める時。
押し倒されて、恐らく所有の“印”をつけられているであろうシェイリーンに、同情の気持ちを込めながら、部屋を出た。
そして、暫くの後―――
執務室の外の壁に寄り掛かっていると…
「入っていいぞ。」
扉を開けたラルフが、シェイリーンを抱えて執務室から出てくる。
ラルフの腕の中のシェイリーンはぐったりしていた。
その首筋に付けられた所有印が目に入る。
「嫉妬もいきすぎると、嫌われるぞ?」
「あぁ、そう思うと怖いよ。」
なら、抑えろよ!…といつもの様な返しは出来なかった。