偽りの結婚(番外編)
ラルフが、あまりにも切ない表情でシェイリーンを見つめるから。
本当はラルフも、自分が嫌われないか怖いんだろうな。
自分に自信のないシェイリーンといい、器用なようで不器用なラルフといい……
本当に、どうしょうもなくじれったい奴らだ。
けれど、口元にはフッと笑みがこぼれた。
「シェイリーンを寝室に連れて行く。後は任せたぞ、ロイド。」
「あぁ、分かった。」
そんな状態じゃ、ラルフが部屋に連れて行く他ないだろう。
了承すると、ラルフが「それから…」と続ける。
「もうここには戻らないからな。」
「あぁ…ってオイ!まだ予定の時刻までかなりあるぞ?」
サラリと言われた言葉に、そのまま返事をするところだった。
「準備があるだろう?準備が。……と言うわけで、ちゃんと終わらせておくんだぞ?」
そう言って、満足げな表情で去っていくラルフ。
何の準備だよ…と突っ込みたかったが、答えなど予想出来過ぎて聞きたくない。
……ってオイ!アイツ自分の仕事も置いていきやがった。
『終わらせておくんだぞ?』
ラルフの言葉を思い出す。
クソッ……やられた……
あぁ……今日は残業だな。
心の中で嘆きながら、執務室の扉を閉めた――――