偽りの結婚(番外編)
「いいや、悪いと言っているんじゃないんだ。むしろ、君の色んな表情が見れて楽しいよ。」
ラルフが微笑み、髪を一房取られる。
ドキッ―――――
ラルフの笑顔でこんなにも簡単に心臓が跳ね、かぁ…と頬が熱くなる。
思わず目を離してしまった私は、本当に“子供”だ。
もう、ラルフと結婚して数カ月経つというのに、こういった事には一向に慣れない。
私がこんなに子供な反応しか出来なくて、ラルフは呆れていないか、いつも不安になる。
ラルフは何も言わないけど…
…やっぱり、大人な人の方が良いわよね?
自然と眉根を寄せる。
「何を考えているんだ?シェイリーン。」
そう言って、両手で頬を包まれる。
「色んな顔は見たいと言ったが、こういう表情はあまり見たくないな。」
その言葉と共に、眉根を寄せた額に降ってくる口づけ。
「ッ………!」
あまりに突然過ぎて、目をパチパチと瞬かせる。
そして、時間差でじわじわと熱を持ってくる頬。
ラルフが触れた額は、ひときわジンジンと熱かった。