偽りの結婚(番外編)
「ほら、やっと王宮が見えてきたぞ?」
ラルフの言葉に、正面を向き直ると―――
「ッ………!」
目に飛び込んできた光景に、息を飲む。
ネイル王国の王宮は、モルト王国の様な白亜のお城だった。
しかし、モルト王国と違うのは、その壁につるの様な植物がつたっている点。
まるで、王宮中の壁を囲む様に這う、つるには所々白い花が咲いていて、自然豊かなネイル王国らしい造りだった。
「きれい……。」
「言うと思ったよ。」
ポツリと呟いた言葉に、ラルフはそう言って微笑む。
バタンッ――――
馬車を降りて、王宮まで吹き抜けになっている廊下を歩いていると…
廊下の柱には緑苔、中庭では色とりどりの花々が迎えてくれる。
すぅ…っと吸い込む空気はとても澄んでいて、一気にネイル王国が好きになった。
キョロキョロと、周りを見渡して歩いていれば、すぐに広間の扉の前に着いた。
途端に、ドキドキと早鐘を打ち始める心臓。
観光気分に浸っている場合じゃないわ……
今からネイル王国の国王様と王妃様にお会いするのよ。
お会いするのは初めてだから、悪い印象をもたれないようにしなきゃ。
そう気を引き締めて、開かれた扉の向こう側へ歩を進める―――