偽りの結婚(番外編)
「こんな母親を持つと、息子は苦労するよ。」
やっぱり……
ウィリアムと呼ばれた人は、ネイル王国の王子だったのね。
私達に、結婚式の招待状を送って下さった人。
……ということは、隣に座っている方は、そのお相手かしら。
まじまじと見つめていると、ウィリアム王子と目が合った。
「ッ………!」
ビクッと肩を揺らせば、ウィリアム王子がフッと笑う。
凄く優しそうに笑う人だな…
そんな、第一印象だった。
「ラルフ、そちらの女性を紹介してくれるかな?」
途端、その場にいた者の視線が一気に自分に集中する。
ビクッ――――
緊張で固まった私の体を、ラルフが引きよせ…
「あぁ。僕の妃、シェイリーンだ。」
「は、はじめまして。シェイリーンと申します。」
そう言って、深々と頭を下げる。
一瞬の間――――
それが、とても長い時間の様に感じられ、とても不安だった。
しかし……
「ほぉ…このお方がお前の心を射止めた女性か。」
聞こえてきたのは、感心したようなブルームの声。