偽りの結婚(番外編)
ボソッと、こうなると思ったよ…と呟くラルフ。
「やっぱり、お前にはもったいないな。」
ははは…と、笑うウィリアム王子。
「シェイリーン、ラルフなんかの妃じゃなく、僕の妃にならないかい?」
「ウィリアムッ!」
もちろん、冗談だと言う事は分かっていた。
誰もが分かる冗談なのに、ラルフだけは、本気で取ったみたいだ。
「ウィリアム王子、そんな事を言ったら、お妃様が悲しまれますわ。」
…と言っても、お妃様もニコニコと笑っているので、やはり冗談が通じなかったのはラルフだけみたい。
ウィリアム王子はラルフの反応に満足したのか、ククッと笑いながら口を開く。
「そうだね。あぁ、紹介が遅くなったが、僕の妻になる予定のリリアンだ。」
「初めまして、リリアンと申します。」
紹介されたリリアン様が、上品に頭を下げる。
リリアン様は、ネイル王国の侯爵家令嬢らしい。
しかし、そんな情報がなくとも、洗練された無駄のない動作と、気品ある顔立ちが、育ちの良さを物語っていた。
「結婚式は、明日の昼執り行う。それまで、ゆっくり過ごしてくれ。」
「それから、夜は、招待客を集めたパーティーをしますから、お越しくださいね。」
「御配慮ありがとうございます。」
国王と王妃、王子と妃に、再度お辞儀をした後、王座の前から下がる。
招待客を集めたパーティー……
少し楽しみでもあり、少し不安を感じながらも、広間を出た。