偽りの結婚(番外編)



シェイリーンの瞳に溜まっていた涙が一気に溢れ…


ギュッ―――――

今度は、シェイリーンの方から抱きついて来た。



そして―――――

「ごめ…んなさ…っ……。」

嗚咽交じりに、言葉を紡ぎ出す。



「ひっく……ごめ…っ…なさ……っ…。」

しきりに“ごめんなさい”を繰り返すシェイリーン。


小さい体が震え、頻りに謝る姿に、見ているこちらが切なくなるほどに胸が締め付けられる。



「何も言わなくていい。」

何に対して誤っているかは、大体予想がつく。

しかし、それはこの場でなくともいい。

今は、迷路園を出て、屋内に避難するのが先決だ。


頭からすっぽりと、なるべく雷の音が耳に入らないようにマントを羽織らせ…

震えるシェイリーンの体を抱き上げる。



「ウィリアム、王宮へ戻るぞ。」

「あぁ、急ごう。」

そうして、シェイリーンを抱えながら、迷路園の出口を目指した――――





< 320 / 547 >

この作品をシェア

pagetop