偽りの結婚(番外編)
昨日、あんな態度をとったにもかかわらず、ラルフは私を迎えに来てくれて。
笛の音を聞いても、出口ではなく、私の所へ来てくれた。
なのに……私は、貴方に迷惑をかけてばかり。
「髪も一通り拭いたが、寒くはないか?」
ラルフは、私の返事を待つより前に、額に手を当てる。
「熱は……ないな。」
独り言のように呟き、ほっと安堵するような仕草を見せるラルフ。
なんで………
「良かった。」
そう言って、ラルフは微笑む。
その笑顔を見ていられなくて、俯く。
そして――――
「なんでっ……。」
小さく声を上げる。
「なんで…そんなに、優しいの…?」
昨日あんな事があって。
一方的にラルフの話を突き放してしまった私に、ラルフも良い気はしなかったはずなのに…