偽りの結婚(番外編)
肯定も否定もせずに目を泳がせていれば…
シェイリーン…と、私の名を呼ぶラルフ。
その優しい声に引かれる様に、ラルフを見れば―――
「おいで…。」
「ッ………!」
手を広げ、微笑むラルフに息苦しい程に胸が締め付けられる。
そして、次の瞬間には、瞳が潤むのが分かり…
「ラルフっ……!」
目の前の広い胸へ飛び込んだ。
「ごめんなさいっ……わたし……昨日…あっ…あんな事言って……。」
そっと抱きしめてくれる温かな腕の中では、どんな虚勢も張れなかった。
涙でたどたどしくなる言葉も、ただ背中を撫でて聞いてくれるラルフ。
「何故、いきなり香水をつけたいなんて言ったんだ?」
答えにグッと詰まる。
けれど、答えなきゃいけない…
ラルフに当たってしまった訳をちゃんと言わなきゃ。
そう思って、固く結ばれた口を、ゆっくり開いた―――