偽りの結婚(番外編)
「私はラルフみたいに、言いよられた事はないわよ?」
赤くなった顔が恥ずかしくて、目を伏せながら小さな声で呟けば…
ラルフは、当然とばかりに口を開く――
「それは、周りも君の魅力に気付いていなかったからだ。それに、君は社交界の場に出てきてなかっただろう?」
確かに、私は社交界の場に行く事はなかった。
継母様やお義姉様は頻繁に行っていたけれど、私は着て行くドレスもなかったし…
ッ…けれど、もし、社交界の場に行っていたとしても、そうなっていた可能性は低い。
「君の母と姉は好まないが、君を社交界に出さなかった事だけは感謝したいね。」
フッ…とラルフが笑う。
「何故?」
疑問がわいたままに、ラルフに問えば…
「もし、君が社交界デビューをしていたら、僕よりも前に君の魅力に気付く人が現れていたかもしれない。僕が君の一人目の男になれなかったかもしれない。」
真剣な瞳が、私を射抜く。
ラルフは私の事を美化しすぎよ…
と思いつつも、ドキドキと高鳴る心臓が、ラルフの言葉に反応して煩い。
「それを思うと、嫉妬で気が狂いそうだ。」
ドキッ―――――
胸が、一層高く鳴った。
ラルフが次々と告白する言葉に、心臓がついて行けない。