偽りの結婚(番外編)
ラルフの告白の前に、何も言えずにいると――
「こんなドロドロとした感情を、君にぶつけたくなかった。」
自嘲的な笑みを浮かべるラルフ。
「けれど…君を傷つけるくらいなら、そんな見栄など張らなければ良かった。」
大きな手が、私の頬を包む。
そして、シェイリーン…と、優しく呼ぶ声にラルフの瞳を見つめれば…
悲しそうに微笑むラルフが、ゆっくりと口を開く。
「僕の嫉妬心から、君を傷つけてしまって、本当にすまなかった。」
そう言って、ラルフは、頬を包んでいた手を後頭部に持って行き、自分の方へ引き寄せた。
そんなっ……
「私だって……」
ラルフの腕の中、目の前の広い胸にしがみつきながら、ポツリと呟く。
「私だって、貴方の周りの女性に嫉妬してた。過去の女性達にも……」
え?…と耳元で驚くラルフの声。
「結婚してからも、貴方はいつも女性の憧れの的で。貴方に近付く女性も、綺麗な人ばかりで…。薄々気づいてはいた事だけれど、ガーネットさんにハッキリ、貴方のタイプとは違うと言われたから、不安でしょうがなかったの。」
今まで胸に秘めていた言葉が、今は素直に出てくる。