偽りの結婚(番外編)
「だから、私も少しでも大人な女性になりたい…って。貴方の好みの女性になりたい…と思ったの。」
また……涙が溢れてきそう……
伝えなきゃと思うと、胸が詰まって、苦しくて。
高ぶった感情は、何故こんなにも涙となって溢れて来るんだろう……
けれど、涙となる程に溢れる感情を、抑える術も知らない私は、込み上げる感情のままラルフに伝える―――
「本当は、貴方に近付いて欲しくなかった…。社交界ではしょうがないと思っていても、他の女性に微笑みかけて欲しくなかった…」
これは、ラルフと結婚して初めて持った感情。
他の女性を想って欲しくないと言う、醜い嫉妬心も、独占欲も。
私の中に、そんな感情があるとは思わなかった。
けれど、今確かに思う―――
「私だけを見てて欲しいの。」
嫉妬心と、独占欲にまみれた言葉に、耳元でラルフがハッ…と息を飲むのが聞こえた。
ゆっくりと距離を取れば、案の定、瞳を見開くラルフの表情が見て取れた。
「驚いた……?」
おどけて見せれば、想像していたのとは違う反応が返って来る。
「そんなに好き?」
眉を寄せ、真剣な表情を崩さずに、ラルフは聞く。
コクンと頷いた後に…
「好き………。」
瞬きをすると、溢れていた涙がツーっと頬を伝った。