偽りの結婚(番外編)



すると、やっといつもの微笑みを向けてくれる。



「嫉妬するほど?」

クスッ…と笑うラルフに、再びコクンと頷く。



「…っすき………。」

いつもは言わない睦言も、今は躊躇いなく伝えられた。



「そうか。」

ラルフは、満足げな笑顔で頭に手を置く。

やっと見れたラルフの笑顔に、心がほっと温まる。




私にも笑みが戻った瞬間だった―――

そう言えば……と、ラルフが涙を拭いながら口を開く。



「レナードからは何もされなかったか?」

思い出した様に、ムッ…と顔をしかめるラルフ。

見透かすような深いブルーの瞳に、ギクッ…と居た堪れない視線を送られる。



「えぇ、レナードさんを突き飛ばして逃げたから。」

嘘は言っていない。

浮気をしているわけでもないのに、言葉を選ぶのは、いつぞやの“お仕置き”を思い出しての事だ。




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