偽りの結婚(番外編)
「え、えっと……それは嫌だけど……」
「けど?」
ラルフは、次の言葉を欲して、先を促す。
「別れたく…ない…です。」
しかし、顔を赤くしながら告白した言葉も、ラルフにとっては満足いかなかったようで…
「ガーネットと、今すぐ別れて欲しい…とは言わないのか?」
「だって…好きならしょうがないでしょう?」
それは、私が一番知っている。
ラルフを好きだと自覚してから、身を引くのは、とても辛かった。
いくらラルフと距離を置こうと、“好き”と言う気持ちは消えるばかりか、どんどん強くなっていって。
結局、心にしまっておこうと思ったのに、気持ちを伝えたのだ。
それ程に、人を愛する気持ちは、簡単に消えてくれない。
だから――――
「私は…傍にいられるだけで良いの。」
「ッ……それは反則だろう。」
私の言葉に、ラルフはボソッ…と何かを言った後で、手で顔を覆い俯く。
そして、はぁ…と深い溜息。
もしかして、呆れられた?
それとも、もうラルフの気持ちは私にはないの?
溜息をついたきり、何も言わないラルフに不安は募るが…