偽りの結婚(番外編)
漸く顔を上げたラルフは、不安を忘れる程、穏やかな笑みを浮かべていた。
そして――――
「全く…何だっていつも君は、ど真ん中をついてくるんだ……。」
困ったように眉を寄せ、ラルフの大きな手が伸びてくる。
「それって……」
伸びてくる手を追っていれば、その手は顎の下に添えられ。
クイッ…と顎を上に向かせられた時には、すぐ目の前にラルフの顔があった。
「どういう……」
ドキッ――――
ラルフの端正な顔が視界一杯に入り、いいかけた言葉は途中で途切れた。
「こういう意味だ。」
「んっ……!」
気付いた時は、既に口づけられていて…
逃げられないよう、抱きしめられ、頭を固定されていた。
そっと、触れるだけのキスは、もどかしいくらい。
いつもなら、すぐに深い口づけにとって代わるのに、今日は、触れるだけですぐに離れて行った唇。
それを、名残惜しそうにぼーっと見つめていれば、ラルフが口元をほころばせ、頭を撫でる。