偽りの結婚(番外編)
「ガーネットとは何もなかったよ。」
「え……?」
キスの後の余韻に浸っていた頭で、間抜けた返事をする。
「ガーネットに寄りを戻さないかと言われたが、謹んでお断りしたよ。」
そう言って、ニッコリとあの紳士スマイルを向ける。
きっと、“謹んで”と言うのは嘘なのだろう。
ラルフは、続けて口を開く―――
「だから、ガーネットとは寄りを戻していないし、過去の女性たちとも寄りを戻す気は毛頭ない。」
「ッ………本当?」
恐る恐る問えば、本当だ…と言って微笑むラルフ。
良かった……
その表情に、やっと安堵した。
そして、ラルフに問う。
さっきは、聞けなかった事を…
「ラルフは……?」
「え?」
言葉足らずな私に、ラルフが疑問の声を上げて返す。
「私の事……好き?」
伝え切った後、ギュッと目を閉じる。