偽りの結婚(番外編)



すると、頭上でフッ…と零れる笑い声の後――




「好きだ。」

その言葉に、弾かれる様に顔を上げて、喜びを露わにする自分がいたけれど…

いや、違うな…と続いたラルフに、一瞬のうちに笑顔が消える。


「愛してる。」

言いなおしたラルフの言葉に、ハッ…と気を飲んだ。




「これは、僕だけの台詞だろう?」


そう言って、微笑むラルフ。

その問いに、涙を浮かべながら…

けれど、幸せいっぱいの笑顔で頷く。




「僕は、君が思っている以上に、君を想っているよ。」

頬を包む大きな手にすり寄れば、その手に引き寄せられる。



そして、再び唇が重なった―――

「んっ……んんッ!」

触れるだけの先程の口づけとは違う、“大人のキス”。

貪る様な深い口づけに、頭の上からつま先までが甘く痺れた。



「ふっ……ぁ…ラル…フっ……。」

息をつく暇さえ与えられない口づけの合間に、酸素を求めて喘ぐ。





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