偽りの結婚(番外編)



「嬉しかった。」

え………?



「君がやきもちを焼いてくれた事が。」

嬉しかった?

うっとおしいじゃなくて?



「今まで、独占したい気持ちは、僕だけが持っているものだと思っていた。」

ラルフの背から離した手を、やんわりと取られる。

そして、私の手にそっと口づけるラルフ。



「けれど、今日……君が初めて、態度で、言葉で示してくれたことが嬉しかったんだ。」

愛おしそうにそう言うラルフに、ただ黙って聞き入る。



「だから、今日は君の全てを見ていたい。次はいつやきもちを焼いてくれるか分からないからね。」



ズルイ………

そんなことを言われたら、拒否出来ないじゃない…

……と言っても、最初から拒否などしていなかったのだけど。

それは、ラルフの背に回した手が示していた。



口では嫌と言いながらも、体は正直だ。




「雷が怖いから……明り…つけたままでいいです…。」

顔を赤くして、フイッ…と視線を外しながら答えれば、ククッ…と笑いを堪えた声が落とされ…




「了解しました、お姫様。」


額に口づけを落とされ、行為を再開するラルフ。





その日の夜――――

外は雷雨だったのに、それを気にする間もなく夜は更けて行った。



< 341 / 547 >

この作品をシェア

pagetop