偽りの結婚(番外編)
「嬉しかった。」
え………?
「君がやきもちを焼いてくれた事が。」
嬉しかった?
うっとおしいじゃなくて?
「今まで、独占したい気持ちは、僕だけが持っているものだと思っていた。」
ラルフの背から離した手を、やんわりと取られる。
そして、私の手にそっと口づけるラルフ。
「けれど、今日……君が初めて、態度で、言葉で示してくれたことが嬉しかったんだ。」
愛おしそうにそう言うラルフに、ただ黙って聞き入る。
「だから、今日は君の全てを見ていたい。次はいつやきもちを焼いてくれるか分からないからね。」
ズルイ………
そんなことを言われたら、拒否出来ないじゃない…
……と言っても、最初から拒否などしていなかったのだけど。
それは、ラルフの背に回した手が示していた。
口では嫌と言いながらも、体は正直だ。
「雷が怖いから……明り…つけたままでいいです…。」
顔を赤くして、フイッ…と視線を外しながら答えれば、ククッ…と笑いを堪えた声が落とされ…
「了解しました、お姫様。」
額に口づけを落とされ、行為を再開するラルフ。
その日の夜――――
外は雷雨だったのに、それを気にする間もなく夜は更けて行った。