偽りの結婚(番外編)



お陰さまで、全く雷は気にならなかったけど…



胸元に視線を落とせば、服から見えるか見えないかの所に、うっすらと赤く色づく所有印。

かぁ…っと、頬に熱が集中し、昨夜の情事がまざまざと思い出される。


良い眠気覚ましにはなったけど……

こんなこと思い出している場合じゃないわ。

ブンブンッ…と頭を振って、壇上のウィリアムとリリアンに視線を移す。




「皆様、この度は私共の結婚式の為、ネイル王国まで足を運んでいただきありがとうございました。」

壇上では、ちょうどウィリアムが、招待客への謝辞を述べていた。




「私とリリアンは、昨日夫婦の誓いを立てた訳ですが、これからは夫婦ともどもネイル王国の為に尽くしたいと思います。」

そう言って、壇上のウィリアムはリリアンを抱き寄せる。

顔を赤らめながらも嬉しそうなリリアンを見ていると、微笑ましくて、見ているこちらも幸せになる。

お幸せに、ウィリアム王子、リリアン様……

壇上の二人に、心の中で祝いの言葉を送った。








ウィリアムの挨拶も後半に差し掛かった時―――


「あぁ…忘れるところだった。」

ウィリアムが不意に呟いた。




< 343 / 547 >

この作品をシェア

pagetop