偽りの結婚(番外編)
お陰さまで、全く雷は気にならなかったけど…
胸元に視線を落とせば、服から見えるか見えないかの所に、うっすらと赤く色づく所有印。
かぁ…っと、頬に熱が集中し、昨夜の情事がまざまざと思い出される。
良い眠気覚ましにはなったけど……
こんなこと思い出している場合じゃないわ。
ブンブンッ…と頭を振って、壇上のウィリアムとリリアンに視線を移す。
「皆様、この度は私共の結婚式の為、ネイル王国まで足を運んでいただきありがとうございました。」
壇上では、ちょうどウィリアムが、招待客への謝辞を述べていた。
「私とリリアンは、昨日夫婦の誓いを立てた訳ですが、これからは夫婦ともどもネイル王国の為に尽くしたいと思います。」
そう言って、壇上のウィリアムはリリアンを抱き寄せる。
顔を赤らめながらも嬉しそうなリリアンを見ていると、微笑ましくて、見ているこちらも幸せになる。
お幸せに、ウィリアム王子、リリアン様……
壇上の二人に、心の中で祝いの言葉を送った。
ウィリアムの挨拶も後半に差し掛かった時―――
「あぁ…忘れるところだった。」
ウィリアムが不意に呟いた。