偽りの結婚(番外編)



どうしたのだろう……


ホールにいた招待客も、何事か…と騒ぎ始める。




「静粛に、皆様。私とした事が忘れていました。」

壇上に一人残されたウィリアムは、微笑む。



「リリアン、あれを。」

ウィリアムの一言に、ハッと気づき、動き始めるリリアン。

それは、まさに阿吽の呼吸で……

結婚して1日目で、すでに夫婦の風格が垣間見えた。




しかし…ウィリアムの言う“あれ”とは何だろうか…

皆目見当もつかずに、待っていれば、舞台袖に消えたリリアンが戻って来た。



瞬間――――

「ッ………!」

舞台袖に消えたリリアンが持ってきたものに驚く。




一旦、舞台袖に消え、戻って来たリリアンの手には、あのブーケが握られていた。

もう、貰い手は決まっていたものと思っていたのに…




「遅くなってしまいましたが、このブーケの貰い手を決めねばなりません。昨日は予期せぬ天候で、表彰をする間もありませんでしたからね。」

そう言ってウィリアムはこちらを見て笑う。



うっ……ごめんなさい……

それは私のせいなんです……

心の中で、表彰を楽しみにしていた皆に謝る。



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