偽りの結婚(番外編)
昨日、雨と雷が目立ち始めた頃―――
皆、降りしきる雨と雷で屋内に避難してしまい、表彰式は中断したそうだ。
何より…主催者であるウィリアムが行方不明だったので無理だったそうな。
その行方不明と言うのは、もちろん、私を探す為に迷路園に入っていたからで…
つまり、表彰式が出来なかったのは、私のせいなのだ。
けれど、うやむやのまま終わらなくて良かった……
皆、あのブーケを欲しがっていたものね。
リリアンの手にある、色とりどりの花が束ねられたブーケを見る。
ちょっと、欲しかったな……
そう思うのは、私も、あのブーケを欲して迷路園に挑戦した者の一人だから。
けれど、私がブーケの貰い手でない事は確実。
早く抜け出せるどころか、出口へたどり着くのが一番遅かったのではないかと思う。
だから、ある意味落ちついてウィリアムの言葉を聞いていられる。
「このブーケは、あの迷路園から一番早く抜け出せた者に渡すと言うことにしていたが、集計の結果、その貰い手が決まった。」
ウィリアムの言葉に、静まり返るホール。
皆、それだけ、あのブーケの行方が気になるのだ。
「幸運にもこのブーケを手に入れた者は……」
シーンと、暫しの沈黙が続いた後、ウィリアムが盛大に口を開いた。