偽りの結婚(番外編)
「ラルフ・ランカスターだ。」
ザワッ――――――――
「ッ………!」
思わぬ人物の名が出たことに、驚く。
それは、自分の名が呼ばれるのではないかと期待していた者たちにも言える事で…
その場にいた招待客の視線は、私の隣にいた人物に集まる。
呼ばれた本人を見上げれば―――
「嘘だろ………。」
ラルフも驚きつつ、嫌な顔をしている。
「おめでとうラルフ。ダントツで君が速かったよ。」
ククッ…と笑うウィリアムは、ラルフを壇上へ上がって来るよう促す。
「……ちょっと行ってくる。」
面倒くさそうな表情を浮かべながら、そう言うラルフ。
その表情にクスッと笑いながら、送り出した。
「おめでとうラルフ。ほら、約束のブーケだぞ?」
差し出されたブーケを、仕方なしに受けとるラルフ。
クスクスと笑うウィリアムは、とても楽しそうだ。
それもそのはず。
男のラルフに、ブーケは似合わない。
当の本人も、ありがとう…と紳士スマイルで受けとっていたけれど、本当は嫌なはず。
ぴくぴくと笑った口元が拒否を示しているもの。
ラルフには悪いけれど、私も心の中でクスクスと笑っていた。