偽りの結婚(番外編)
ブーケを誰かに押し付ける事が出来るから嬉しいのかしら?
それとも、真面目に誰かにあげたいとか…
ラルフが持っているものはウェディングブーケ。
本来ならば、花嫁が投げて、それを受けとった者に幸せが来るとされているものだった。
ラルフは、自分が持っているよりも、次の人へ幸せを届けたいのかもしれないわ。
そう思っていると――――
「シェイリーン。」
ラルフの明瞭な声がホールに響く。
その視線は、真っ直ぐ私の方へ向いていて…
「おいで。」
ラルフが手を差し伸べる。
一斉に皆の視線が私に集中した。
「ッ……!」
えっ………私?
自分の名が呼ばれたことに驚きを隠せない。
皆の視線と焦りで、あたふたとしていると…
「シェイリーンさん、前へ。」
朗らかな笑みを浮かべたウィリアムが、私を壇上へ誘う。
それに観念した私は、皆の視線をひしひしと感じながら、壇上へ歩いて行った。