偽りの結婚(番外編)
壇上に行く途中、ガーネットとレナードの姿を捉えたけれど、特に言葉を交わすでもなく通り過ぎる。
ただ、ガーネットの無表情からの視線が少し怖かった。
あの様子じゃ、“丁重に”お断りしたというラルフの言葉は嘘ね。
そんなことを考えていると、すぐに壇上へ着いた。
差し出されたラルフの手を取れば、引き寄せられる体。
そして、ラルフは招待客の方へ向き――
「このブーケは、愛しい妻に捧げたいと思う。」
そう言って蕩ける様な笑みを浮かべたラルフに、ホールから黄色い声が飛んだ。
スッ―――――
腰に当てられた手が解かれたかと思えば、目の前で跪くラルフ。
「ッ……ラルフ!?」
私とホールの招待客の驚きの声が木霊する。
しかし、ラルフは気にした風もなく…・
「シェイリーン、僕を跪かせるのは君だけだ。」
私の左手を取り、見上げるラルフの瞳に、ドキッ…と心臓が跳ねる。
「愛してる。これからも、一生君を愛し続ける事を、このブーケに誓う。」
まるで、あの時のプロポーズを受けている様なラルフの言葉。
左手の薬指に光るプラチナリングに口づけたラルフが顔を上げ―――
「受けとってもらえますか?」
一生に刻む心臓の音が決められたとしていたら……
私はきっと、ラルフへの甘い胸の高鳴りで占められているのでしょうね。
「はい!」
そんな幸せなトキメキを感じながら、同じく、幸せがたくさん詰まったブーケを受けとった。
≪昔の女?≫ END