偽りの結婚(番外編)
今までは、19という年齢だったからか、皆の視線が気になって。
国を支える幹部組織の人達からのプレッシャーもあったから。
本当にこんな娘に王子の妃が務まるのか…と。
最初はそんな目で見られてきた。
けれどラルフの支えもあって妃見習いや公務に励んでここまで来た。
成人した今ならなんとなく胸を張ってラルフの傍にいられるような気がする。
それが一番嬉しかった。
それに……
「この花はラルフが?」
「あぁそうだ」
ラルフの言葉に胸が高鳴る。
他でもないラルフから一番に祝われたことがとても嬉しかった。
改めて両手いっぱいの花を見つめる。
薄い紫色の…王宮では見た事のない種類の花。
「何ていう名前の花なの?」
名前が気になってラルフに問いかければ…
「スターチスという花だ」
「スターチス……」
飴玉を口の中で転がす様に花の名を呟く。
「聞いた事のない花だわ。とっても綺麗な花なのね。」
すぅ…と花の匂いを吸い込めば、仄かに良い香りが鼻をくすぐる。
起きる前に香った匂いはこれだったのね。