偽りの結婚(番外編)
「良い匂い…。ありがとう、ラルフ」
ふわりと笑えば一瞬目を見張り、目線を逸らすラルフ。
その顔は少し赤くなっていた様な気がした。
そこでふと思う。
ラルフが自分よりも早く起きていた理由。
受けとった花束がまだ瑞々しいのはもしかして……
「このお花、ラルフが取って来てくれたの?」
伺うようにして聞けば…
「あぁ、もちろん。どうしても、その花を君に贈りたかったんだ」
嬉しそうな顔をしてラルフが答える。
「けど、王宮でこの花は見た事ないわ」
スターチスという名の花は聞いたこともなかったし…
不思議そうに花を見つめていれば、ラルフがクスッと笑いながら、それはそうだ…と口を開く。
「その花は、大きな庭園を持っている家の者から分けてもらった花だからね」
悪戯が成功した時の子供の様な笑顔に、ドキッと鼓動が跳ねる。
「それじゃ…ラルフが朝早く起きていたのは、これのため?」
ドキドキと、胸の高鳴りを感じながらラルフを見上げば…
「あぁ」
今度はふわりと柔らかい笑みを浮かべる。