偽りの結婚(番外編)
すると、シェイリーンは先程よりも小さな声で「ラルフ……」と言う。
嫌な予感が的中した事に、深い溜息をつく。
本当に頭を抱えたい程だ。
どこでどうなったら、シェイリーンに飽きるという事になるのか聞かせて欲しい。
表情一つ、言葉一つで、こんなにも煽られ、掻き乱されているというのに。
「どうやったらそういう考えになるんだ。」
まさかここまでさせておいてもう気持ちがないと思われているのではないだろうな。
そんな最悪な答えが返って来るのではないかと、こちらがヒヤヒヤしながら待っていれば…
「だって、ラルフの周りには綺麗な女性ばっかりだったでしょう?」
右手の手首をベッドに縫い付けられたままのシェイリーンがゆっくりと口を開く。
「より取り見取りだったのに、何で私を選んでくれたんだろう…とか。もっと綺麗な女性はたくさんいるのに…なんて不安がいつも付きまとっていて……」
見つめる視線に居た堪れないのか、身体を横向きにして小さく丸くなる。
そして、抑えている方の手にキュッと掴まり、不安を一つ一つ吐いていくシェイリーンの話をただ聞く。
「私は貴方を引き止められるだけの自信がないから…」
「だから身体で繋ぎとめておこうと?」
その言葉にビクッと肩を揺らし、コクンと頷くシェイリーン。
それが卑怯な事だと思っているのだろうか。
個人的には、愛する者を引き止める為にどんな手段でも使う事には共感できる。
今この瞬間ですら、シェイリーンを自分の方へ向かせるのに必死になっているのだから。
いや、その前にシェイリーンは根本的な所から誤解をしているのだが…