偽りの結婚(番外編)
ギシッ…――――
ラルフが座ったベッドが軋む。
「遅くなるから寝ていていいと言っただろう。」
「…………」
確かにラルフは先に寝ていていいと言った。
けれど、その理由は聞いていない。
「なんで……」
言いかけた言葉を途中で飲み込む。
「え?」
「なんでもない……」
先を促す様なラルフの言葉に、思わずそう言った。
“なんで帰りが遅いの?”
そう言葉に出来なかったのは、うっとおしいと思われたくないから。
ラルフだって一人の時間は欲しいだろうし。
帰りが遅いくらいで一々こんな事を聞かれたら、きっとうっとおしいと思う。
だからこそ、聞けなかった。
「もう寝よう。」
ラルフが私を抱き寄せて、横になる。
今日も抱きしめるだけ……
「おやすみ、シェイリーン。」
「おやすみなさい…」
今日も虚しい声を寝室に響かせ、夜は更けていった。