偽りの結婚(番外編)
カチャ…――――――
不安に苛まれていると、寝室の扉が静かに開いた。
途端息をひそめて目を閉じる。
寝たふりをしてしまうのは、どんな顔をしてラルフを迎えたら良いか分からないから…
ギシッとラルフの重みを受けたベッドが軋む。
「寝たのか。」
小さく呟くラルフの声。
寝たふりをしてラルフを騙している罪悪感から、キュッと胸が締め付けられた。
フワッ……―――――
不意に伸びてきたラルフの手が私の頭に触れる。
大きい手が優しく髪を梳くこの瞬間が、不安を和らげてくれる時間だった。
ラルフの髪を梳く仕草は恥ずかしかったはずなのに、今はとても安心する。
少しでも愛されている…と思えるから。
ラルフは私を抱かなくなってから、こうして眠っている私の髪に触れることが多くなった。
寝ている私の髪を梳き、しばらくしたら頬に口づけを落とす。
今日も満足したのか髪を梳く手が止み、背後にいたラルフが動く。
ギシッ―――――
ラルフの手が顔のすぐ傍に下ろされ、ベッドが大きく軋む。
目を閉じていても視界が一層暗くなったのはラルフが覆いかぶさっているから。
近づいてくる気配にただただ寝たふりをする。