偽りの結婚(番外編)
ラルフに申し訳ないと思いつつも、ラルフがいなければあのつわりを乗り越えきれなかったかも…と今となっては思う。
胃が何も受け付けなくて。
けど、お腹の赤ちゃんのために食事をとらなくちゃいけない。
吐き気との戦いに何度敗れそうになったか…
暫くそんな日々が続いていたため、ラルフはすっかりこの調子。
やっとつわりが少なくなって歩けるようになったのに、私を見つけてはこうしてやってくるのだ。
「少しくらい動いた方が良いのよ?」
「なら歩くだけでいいだろう?」
最初こそ心配してくれることが嬉しくて、愛されていることを感じていたけど…
過保護さに磨きのかかったラルフは普通の生活ですらさせてくれなくて。
「だって何かしていないと暇なんだもの。」
今やお腹は目に見えるほど大きくなり、お腹を締め付けるドレスは入らなくなった。
見るからに妊婦の様相になった私に周囲は気遣うばかりで何もさせてくれない。
今日だって侍女に頼み込んで仕事を分けてもらったのに。
「だからと言って、侍女の仕事など…」
続く言葉を紡がなかったのはもう何度目としれないからだった。
自分でもわかっているからこそラルフは黙ったのだろう。